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ふたたび、本 [それから]

●『風と木の詩』

ジルベールが死んだあとのセルジュの取り乱しっぷりを読んで、
わかるーと思う。笑。

●谷口ジロー『犬を飼う』

タイトルは「飼う」だが、中身は看取る話。
犬は猫よりも具合が悪くなってからが長いという。
我々は一か月ぐらいだったけど、こんなに長く面倒を見るのは、
精神的にもつらいと思う。
涙無しには読めない。

●内田百閒『ノラや』

ずっと怖くて読めなかったが、今なら読めると思って手に取った。

ノラは最初子猫で、しかも外猫で、
それが次第に大人になって、さかりがついて、帰ってこなくなった。
それは、仕方がないような…気も…
当時だったら、よくあることのようにも思う。

でもつらい。つらいということもよくわかる。
どこかで飼われているならまだいいけど、
病気になって帰れないとか、車にひかれたとか、
考えただけで耐えられない。
だから今は外に出さないんだよねえ。

百閒の嘆きっぷりがすごくて、
つらさに共感して泣きつつも、
滑稽で笑ってしまったりもする。
子猫から成猫になるまでのノラのいきいきとした描写も素晴らしい。

むしろ私に響いたのは、
ノラがいなくなって半月後ぐらいから登場したクルツだ。
この猫はしっかり看取ることができた。

伏せるだいぶ前から、すごく甘えるようになった、
よれよれになりながらも外に行こうとするのでとめた、
その日から11日後に亡くなった、
ごはんが食べられなくなり、
牛乳もあげても吐くようになり、
なのに洗面所にのぼったり、
最後の瞬間は「くしゃみをしてる」と思ったらしい。
あああ、わかるわかる。
茶々丸と似てるーーー。

クルツの弟かもって言ってたけど、
全然違くて、かなり年だったのでは?
と思ったら、最後のほうに、
じつはけっこう年だったことがわかった、と書いてあった。
でしょでしょ。

庭に埋まっているけど、でも家の中にもいると思う、
というくだりも、私が思ったことと同じだ。
わかるー、わかるよーー!
内田百閒と同じ結論に達してたよ、私(笑

●石津ちひろ/文 宇野亞喜良/絵『あのねこは』

猫をうしなった後に思い出している。
かなしみを、大事に大事に磨いてとじこめてある。
絵がとってもとっても素敵。
猫の動作とか表情とか、人間との距離感とか、わかるー。

●保坂和志『もう一つの季節』

茶々丸の名前のネタ元。18年ぶりに読み返した。

冒頭から、
主人公が幼かった頃に、当時飼っていた猫と一緒に写っている写真が登場する。
それを何十年も経ってから主人公の息子(くいちゃん)が見て、
写っている子どもが自分の父親であることに驚き、
さらには、写っている猫が死んでしまったということを理解できない、
という場面から始まっていた。

ああ、そうだった。
保坂和志のいいのはこういうところなのだ。

佐々木敦という人の書評にこうある。
「保坂の「猫小説」は、猫という生きものの生態や魅力が事細かに描かれているのでもあるけれど、それ以上に、猫という特別な存在を通して「死」と「生」、そして「世界」と「存在」のことを考える、考え続けるものになっている。」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/culture/jihyou/CK2018040402000250.html
「大切な者を喪った時、その哀しみがあまりにもつらくて、その耐え難い哀しみを何とかしなくてはならない。或る時期以降の保坂和志の小説は、この要請から出発し、今もってその周囲を旋回している。彼の時間論、彼の小説論、彼の哲学は、煎じ詰めれば、すべてがこの要請への応接として構築されている。」
http://gunzo.kodansha.co.jp/18930/26986.html
なんだこの書評、むちゃくちゃかっこいいぞ。

猫を飼うときに、こんな小説から名前を取った自分。

そして18年後に猫が死んで、「死」について知った。
「世界」や「存在」について考えている。

18年前は予想してなかったけど、
まるで、最初からそうなることが決まっていたかのように、
18年間しまっておいた玉手箱をあけたら、
急に煙がでてきたみたいに、
今、猛烈に、保坂作品の中に自分がいる。

●小沢さかえ/絵 保坂和志/作『チャーちゃん』

保坂和志が絵本を出していたとは。
これまた絵がとってもかわいい。油絵なんだって。
チャーちゃんは、保坂和志にとって重要な猫。

「ぼく、チャーちゃん。はっきり言って、いま死んでます」で始まる。
つまり「あの世」が描かれている。

イキイキしてて、楽しそうなチャーちゃん。
こんなに楽しそうなところなら、茶々も幸せだろうな。

と思いつつ、一方で、
いろいろなものが混ざり合い、踊り、歌い、飛んでいるこの天国は、
現世での、あの手触りや、人間と猫としてかかわっていた関係性とは、
すごく違うんだろうな、と思って、
ものすごくさみしくもなる。



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